とあるマンガの最終回

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矢継ぎ早に現れては消えるイメージを書き留めておこうと慌ててパソコンに向かった、が見当たらない。 「あれ?パソコンは、なんでないの」 「おおっ、魔ユミンは仲間を探しているのですね」 そう言うと、谷向井さんは物凄い早さで絵コンテをきってゆく。 「いや、て、言うか、フィギュアは?マンガやクッションは何処に?」 慌てて、この殺風景な自分の部屋を見渡す。 「ほほう、だだっ広い殺風景な空間を魔ユミンはあてもなくさ迷う」 「ど、どこにやったの!?」 「皆、どこいったのー!?」 「うわあ、ま、まさか捨てたのかーっ」 「うわあ、ま、まさか死んだのかーっ」 妙なシンクロをさせながら一心不乱に書き続ける谷向井さんを見下ろし、僕は泣きながら言葉にならない声を上げた。 「おいっ、ご、ごのやろう~」 「おいっ、ご、ごのやろう~っ、おおっ、魔ユミンの心の叫びが伝わってくるっ言葉にならない気持ちがっ」 「か、返せ~っ、僕の宝物達~っ」 「か、返せ~っ、絶望に嘆く魔ユミンの前に仲間達の姿は無く~っ、良いっすね」 何言っているんだコイツ、と僕が谷向井に掴みかかった瞬間だった、その絵コンテ(下書き)が目に入ると、身体がピタリと動かなくなった、思考がその絵に魅入られてしまったのだった。 その絵は、砕けた腰を仰け反らせ、祈りを捧げる組んだその拳を光に差し出すコントラスト、汗と涙で張り付いたボロ服に、抗った絶望と美しさ、そして確かな女の子を感じた、新たな萌えの新境地だ。 僕のイメージの魔ユミンの全てがそこにある、最早、その絵さえあれば他は何も要らない。 「ああ、ありがとう、これが新境地なのね」 知らず知らずの内に零れ出た涙と、その言葉に、彼も呼応する。 「ああ、なんと言う事だ、全てを受け入れ、感謝して、彼女は新しい力を手に入れたんだ、ヤバいよセンセイ、涙で絵が描けない」 僕達は確信した、最高傑作の誕生を。
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