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そんな時、僕のスマホに着信を告げるメロディーが鳴り響いた。
手に取ると高林編集長からだった。
「もしもし、はい、出口です」
そう、どうせまた編集長からの催促だと思っていたのだが、僕は、驚愕した。
谷向井さんの顔を黙って見やると、何だろうと訊いてきた。
「ん、何?締め切り日変更でもした」
僕は徐に応えた。
「週刊少年ユニーク、廃刊だって」
カー、カー、カー
カラスの鳴き声が聞こえるって事はもう夕方なのだろうか。
お互い黙ったまま随分時間が経った気がする、高林編集長から突然の廃刊宣言、当たり前だが、全ての連載が今回で打ち切りとなった、なにやら真の大人の事情らしい、そしてKTDも多分に漏れずに。
静寂を打ち破ったのは谷向井さんの深いため息だった。
「ハァァ、また無職か」
この業界ではよくあることと聞いた、連載が終われば、また次書かせてもらえる保証は無い、即ち無職の身になる。
「ハァァァ、もう書けないのか」
僕は僕で、今後の生計の立て方よりも、中途半端に終わったこの作品が心掛かりとなっていた。
「書けばいいじゃん、お金にはならないかもしれないけど」
お金はこの際後回し、確かに谷向井さんの言う通り、自分の中では完結できる事はできる、ただ、読者の皆にも、この物語を終わりまで読んでもらいたかった。
しかし、残された日数は3日、しかも32ページ、絶対的無理だけど、駄目もとで、訊いてみた。
「谷向井さん、手伝ってくれますか」
「ん、何を?同人とかヤダよ」
僕と谷向井さんとは全く噛み合わない性格同士だけど、物語を、KTDを愛している気持ちは一緒だと思って、心の内を打ち明けた。
「え、えーっ、マジでぇ~」
「ありがとうー!」
こうして、僕達の怒涛の3日間が始まった。
「ちょ、ちょっと、まだやるって言ってねー」
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