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巨大な音波。その衝撃で窓ががたがたと揺れる。 エヌ氏とジー女史は黙っている。 目を閉じ、黙ってそれを聞いている。 連続する振動、次第にそれは大きく、そして激しくなっていく。 それは『足音』だった。 そして彼らは、それが『足音』だということを知っていた。 知っていて、そして、受け入れていた。 「……せめてなあ、こんなことになるってわかってりゃなあ」 「分かるわけないって」 受け入れた上で彼らは笑う。 すべて、どうって事ないというように。 「なあ、変なこといっていい?」 「うん?」 「生まれ変わりってさ、あるじゃん?」 「あるね」 「もし生まれ変わったらさ、俺らもっと幸せになれるかな」 「それ聞いちゃう?」 「あー、やっぱ男らしくない? こういうのって」 「もーね、キミに男らしさなんて求めてないですよ、いまさら」 「どーもすんません」 「すんませんじゃないですよ、キミは」 大きくなる、振動。 大きくなる、咆哮。
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