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「(仕立屋)旦那様あんまりでございます、
ちゃんとお言いつけ通りに致しましたのに」
「言いつけ通り?は、どこがだ。
私の趣味にはまったく合わぬ。
持って帰れ、消え失せろ、
もう口もきくな!」
(と言いつつ仕立屋には、
代金は明日支払うことと
暴言は気にしないようにと伝えるよう
召し使いにそっと命じる)
「ではケイト、お前の父の元へ参ろう。
なんの、普段着で構わぬ。
肉体を輝かせるのは美しい服ではなく
精神なのだから」
朗々と台詞を放つ小太郎くんの声を、
ただ惚けたように聞きつづけて。……
「ね、ケイト。
着るものが貧しかろうが、
それでお前の値打ちが下がるものではない。
もしそれが恥ずかしいと言うのならーー」
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