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(カタリーナの前に膝まづいて
耳元に囁く)
「……みな私のせいにしてしまえば良い」
吐く息が耳の奥に届いてしまうと、
ぞくりとした感覚が
一瞬頭を真っ白にして、
胸の動悸が止まらなくなり。……
(ペトルーキオ、
カタリーナの縛った手をほどく)
「さあ、元気を出して。
すぐお前の父の元へ行って、
大浮かれの宴会を開こうではないか」
[中略]
場面 カタリーナの実家への道中
「さあ行こう。
いよいよお前の父様の家だぞ……
なんと素晴らしい月が
煌々と輝いている」
(ふたり、馬から降りる)
「つ……月ですって?太陽ですよ、
いま時分月だ、なんて」
「違う、あれは月だ」
「いいえ太陽です……」
(カタリーナの襟もとを強引に引く)
「ひっ!」
襟もとを本当に強引に引かれて、
驚きと恐怖で
台本にない悲鳴が
勝手に口から漏れ出てしまいました。……
「私の命に賭けてあれは月だ!
お前はいちいち私に突きかかる。
もう良い、もとの別荘に戻るぞ。
まったく可愛いげのない女だ、
突きかかる以外に能がないのか」
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