なんでお父さんが今日家にいるの?

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 俺たちは付き合い始めた頃のようにいちゃついた。死んだ後だというのに若返った気分だな。そしてあっという間に時間は過ぎていく。 「そろそろ時間だな。由紀、恵美のことは任せたぞ」 「わかったわ、でも大丈夫よ。私とあなたの子供だもの、立派に育つわ。だからお空の上から見守っていてね」 「そうだな……いつだって見守っているさ」 「うん……そして私がそっちに行くのを待っててね」 「わかった……ずっと待っているから、なるべく遅くに来てくれよな」  長生きしてほしい……そして俺を待たせた分だけお土産話をたくさん聞かせてくれ。 「ねえ……最後にもう1度……」 「わかった……」  俺たちは最後のキスをした。長い長いキスだ……このまま消えるとしようかな。まるで映画のようにロマンチックじゃないか……。そして時刻は9時となったようだ。俺の体から妻のぬくもりが消えていき……俺自身の感覚も消えていく。さようなら由紀……そして最後には会えなかったけど恵美も幸せにな……。
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