第一章 料理

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友人と別れて、改札に入る。 中央線で一本。 新宿に出やすい駅に住んでいるのは便利だ。 電車の中でフェイスブックを開く。 友人たちの投稿を見て、ため息が出そうになる。 [今日は、かなこたちと表参道で女子会☆みんな変わらないなぁ] [旦那と砂浜デートなう] [ひろ君が初めて歩きました!さすが、わが子] 数々のリア充どもの写真たち。 皆さん、人生を謳歌してらっしゃる。 西荻窪に着いて、彼に遭遇した。 「俺も職場の人と飲んできちゃったよ。ぴったりだったね」 帰るときは連絡を入れるから、少し待っていてくれたようだ。 こういうところは、付き合い始めのころから変わらず優しい。 「帰ろ」 今日は、飲み屋街の道に向かう。 「今朝ここを通って、靴が汚れちゃった。この前一緒に選んでくれたやつ。」 「靴は汚れるものだからね。ダメになったらまた新しいの買えばいいよ。 あ、パイナップルラーメン気になるよね。今度食べに来よう。」 彼が言っているお店は、そのままラーメンにパイナップルが入っているらしい。 味は人によるとか聞いたけど、結構人が入っていくのを見かけるから人気はあるようだ。 酒と焼き鳥の焼けるニオイ。 注文を繰り返す店員さんの声が響く道を歩く。 店内がいっぱいで、狭い道に席がはみ出ており、更に狭い。 私はこういう店が嫌いじゃない。 どちらかといえば好きだ。 酔っぱらいの領域だから、今日の私もここの一員だろう。 このお店に最後に来たのはいつだろうか? よく覚えてないけど、引っ越してすぐだった気がする。 あの頃は、この人との将来しか見えてなかったはずなのに。
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