第二章 風呂掃除

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「そうだね。でも、住めない訳じゃないし、まだしばらくあそこでいいと思うけど。」 引っ越したら同棲は続くんだろう。 結婚もせず、ただ一緒に生活するだけの関係。 周りの友人が次々と結婚して、私は行き遅れ、内縁の妻状態で逃げられなくなる。 そんなことが一瞬で思い浮かんだ。 「急ぎじゃないし、今度ゆっくり話し合おう」 彼にとっては急ぎじゃないというだけ。 私にとっては選択は一つだけど、重たい決断だった。 店を出て、帰路に着く。 電車で西荻窪に着き、今日は商店街を通って帰宅した。 「ただいまー」 彼が家の中に入っていく。 玄関が狭いので一人ずつ靴を脱いで上がらないといけない。 私も彼の後に続いた。 今日はストラップ付きの靴だったので、しゃがまないと外せない。 「おっと・・・」 がらんと音を立てて何かが倒れた。 ふと顔を上げると彼が、先ほどお風呂掃除に使った洗浄液の容器を持っている。 「何これ?・・・あ、パイプの掃除したんだね。ダメだよ。空っぽのゴミ置いといたままにしちゃ。」 「ごめん。出かける準備してすっかり忘れてたよ」 お腹がいっぱいだからだろうか? 私の中で、黒い汚れがドロドロの液体と混ざり合って渦を巻いている気がした。
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