一章 蝶姫と婚約者

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今朝方、戦から舞い戻った屋敷の主・橘定春は、自身の身体を休ませる事なく、臣の一人と共に病弱な娘の病床を見舞っていた。 「身体の具合はどうだ?我が愛しき蝶姫よ」 「心配には及びません。昨日までの熱も引き、だいぶ調子が良いのですよ」 定春の問いに答えたのは、妻の富子。 柔らかな微笑を湛え、傍らの者を見遣る。と、そこには寝間着姿の少女が、衾を胸元まで手繰り寄せて上半身を起こしていた。
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