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「山口 美香さん。それでさ、美鈴ちゃんに未来を占ってもらいたいんだ」
「私、将来は大学に行って外浜君と学生結婚するのが夢なの」
私は急に泣きたい気分になりだした。どうしても、いつもの夢のような日常を壊されたくはなかった。必死にテーブルの上の中央の水晶玉を睨んでいた。
私は感情を抑えながら驚く振りをした。顔を上げて、
「あ、これは! このままだと! その……山口さんは別の人を見つけてしまう。他の高校の男性に会ったり駅にいるストリートシンガーや、都会のダンスホールなどに行かないと、そして、見聞を広めるの。そう世界を広げるの。その中で一番外浜君がカッコイイって思えないといけないの。いつか結婚後に破局が起きてしまうわ。急いだ方がいいかもしれないわ!何もかもまだ早過ぎるのよ!」
私は咄嗟に嘘を並べた。
何故か山口さんに別のいい男を見つけてもらいたい。といった下心が丸出しになった嘘が口からでてきた。
「えーと、他の高校やストリートシンガーに会えばいいのね。でも、私まだ未成年だからダンスホールとかは行けないわ。行ったこともないし」
「……占いは信じるか信じないかの二つだけです。希望を持つか希望を捨てるか、当たるか当たらないかは別として」
私は母に言われたことをそのまま言った。
「解ったわ。ダンスホールは前から行ってみたかったの」
そう山口さんは言った。短めのスカートで、少し茶髪が入り混じった胸の大きいスタイル抜群の人だったから、おあつらえ向きにそういう場所で遊びたかったのではと、この時に思った。
「ありがとう。美鈴ちゃん。これからも俺が一番だということを山口さんに知ってもらいたい。その占い通りにするよ。結婚しても不幸になるのなら意味がないからね」
外浜君はピンとした鼻を上に向けて、ニッと笑った。
次の日から、私は占い小屋を休みにした。土日には必ず、山口さんの行動をストーキング擦れ擦れに調べ回った。
他校へ頻繁に行った山口さんの噂を収集したり、駅のストリートシンガーに聞きに回ったり、ちょっと怖いけど都会のダンスホールで年齢を誤魔化して侵入したが、でも、大人っぽい雰囲気と無縁な私でも安々と入れた。オレンジジュース片手に話好きな大多数の女の子と話をしたりしていた。
ある日曜。
私の嘘が効果を発した。
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