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ダンスホールで山口さんは別の男性と仲が良くなったと、噂好きな軽い感じの女性に聞いた。その人と公園でアイスクリーム片手に話している時に、私はまた白昼夢のようなまどろみの中に入れるようになった。
日差しが弱い曇りの日だった。
私は夢遊病患者のように占い小屋のある商店街へとトボトボと歩いていると、薄暗い陸橋の階段に外浜君が頭を抱えて蹲っていた。
「外浜君!」
私は駆け寄って、すぐに救急車をスマホで呼ぼうとしたら、外浜君は知的な外国人のような鋭い目を私に向けて、「大丈夫だから」とか細い声を発した。
外浜君は重い頭痛持ちだったのだ。
アスピリンが必要なくらいの。すぐに体調を崩すような人だった。
「美鈴ちゃん。君は山口さんを知らないか?最近変なんだ。何故か美鈴ちゃんが占い小屋を閉めてから、様子が可笑しいんだ。俺によそよそしくしたり、最近誰かにつけられているみたいだとか、私の噂が広がっているとか愚痴を言うようになったんだ。だから、頭痛が最近多くて」
私は内心。嘘がバレたらどうしようと不安になったが、初めての占い稼業の時の自信のなさを隠すための涼しい顔をして、ニッコリと笑った。
「それは、外浜君の良さが解る前兆だと思うわ。しばらくすれば、元通りになるから平気だと思ってね。きっと、今は山口さんは迷っているのよ。外浜君と色々な男性を見て来て悩んでいるんだと思うわ。だから、気にしないで」
私はまた嘘を吐いてしまった。
こんなに弱っている外浜君に嘘を吐く。
それは弱者をムチで何度も叩く行為と同じ。
いつもの白昼夢のようなまどろみの生活と、淡い恋心のためにこんな酷いことをするのは、一体私はどうしてしまったのだろう?
何かが決定的に違うように思う。
けれども、私はそうしてしまって、そして、いつまでも続けたかった。
一週間後のある昼下がりの占い小屋で私は溜息を吐いていた
結局。
山口さんは他の男性と付き合うことになった。
外浜君は二度とここへは来なくなった。
もう一度、水晶玉を覗くと……。
「嘘……でしょ……」
そこには、外浜君と私が大人になって暖かい家庭で、赤ちゃんたちの世話をしている姿が写っていた。
幸運の未来を占える水晶玉は、私にとっては未来をなくすシャボン玉のような存在だった。
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