11人が本棚に入れています
本棚に追加
窓の外は夕立でグランドには、所々に水溜りができていた。
高校生になった私は、今でも商店街の一角に占い小屋でお客の相談事や世間話をしていた。
他愛ない日常のはずが、次第に私の中で一番大切なものとなってきた。
実は外浜君と同じ高校に入学した。
今でも初恋をした外浜君のことが一番好きだった。
教室では余り目立たない私も、今では占い師としては商店街で一番人気だった。
でも、クラスの友達には何も言わない。
あの薄暗い小屋での白昼夢のような恋は、どこか現実離れしていて、それでいて、そんな私を含めた現実だった。
雨が止んだ。
下校の通学路を、真っ直ぐ商店街へ向かう道を自転車で走行していると、後ろから呼び声が聞こえた。
「美鈴ちゃん!」
停まって軽く振り向くと、外浜君だった。
私は頬を赤らめ俯いた。
外浜君が自転車で私の隣に来ると、一瞬のうちに気まずい空気が私を襲った。
けれども外浜君は快活に言った。
「山口さんのことは、あれから忘れる努力をしたよ。それで、努力が報われて、新しい女の子を好きになったんだよ。でも、その人には好きな男の子がいて、俺も必死なんだ。そこで、美鈴ちゃんに占ってもらいたいんだ」
外浜君は完全に吹っ切れたのだろうか。
そして、最後の神頼みのように占いに頼ったのだろうか。
「確か美鈴ちゃん。前に言ったよね。占いは信じるか、信じないかって。もう一度。俺。信じてみるよ」
外浜君はどっちにも言えることを告げた。
その時、私は閃いた。
この作戦には自信がある。
「外浜君。占い小屋に行こう。詳しい話はそこで......」
そういえば、私は占いをしてから敬語を使ったことがない。
そんな不思議な空間にいるのが私だからだろう。
商店街に着くと、自転車を占い小屋の脇に置いた。
最初のコメントを投稿しよう!