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隣の八百屋のおじさんはおおらかな性格だったから、自転車が少し八百屋寄りにはみ出しても何も言わない。
薄暗い小屋の中でローブに着替えると、外浜君はテーブルにのった水晶玉を覗いていた。
私は椅子に座ると、水晶玉を覗いて外浜君の話に耳を傾ける。
「同じクラスなんだ。その子。石井 理恵って名前でさ。その子の好きな男の子も同じクラスにいる。幼馴染みなんだってさ。だから、どうしても、美鈴ちゃんの力が必要なんだ」
外浜君は必死なんだ。
ただ私も必死なんだ。
私は水晶玉を覗いて作戦を実行した。
「旧校舎に二人っきりになって、オシャレなラブレターを渡す。と出たわ。その男の子の名前は?」
「清水君」
「そう。清水君にも、自分が石井さんのことを好きだということを言うの。私は応援するために、近くにいるわ」
外浜君は難しい顔をした。
それもそのはず、この作戦には勇気がかなり必要で、玉砕するのは目に見えている。
それに男の子からのラブレター?
私の考えも勇気がかなり必要だった。
でも、こじらせるのはよくない。
結果は玉砕でもこじらせるのはよくないと私は思った。
私は応援していくことにした。
そして、玉砕した外浜君は一人の私に気がつくだろう。
私に気づいてほしい。
水晶玉を覗いていた外浜君はニッコリと不敵に笑うと、外へと出た。
次の日の放課後。
私の心中を他所に外浜君は廊下で清水君と怖いくらいな真剣な顔で話し合っていた。
外浜君と清水君はお互いに握手すると、二人同時に頷いた。
私は応援する振りをして、心の中で祈っていた。フラれて下さい。フラれて下さい。
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