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バンッ
「ブヒィィィ!」
扉が大きな音を立てて開くと同時に豚の鳴き声が聞こえた。
少ししてそれは部屋の中に入ろうとした者の悲鳴だと分かる。
……いや、見た目は豪奢な服を着た二足歩行する豚のようにしか見えないが。
「ま、魔王様に…お、お目通り…し、したく…」
ズリズリと這うように謁見の間に近づいてくるも、扉の辺りでまたも弾き飛ばされる。
…一体どれだけ魔王に対して邪な感情を持っているのやら…
「この部屋に入れぬ者に用は無いと魔王様はおっしゃっておられる」
「貴様に用は無い。魔王様と直接話をさせろ」
側に控えていた宰相が言うも、目の前の豚は我と話をさせろと喚く。
「魔王様が誕生した故、魔王様の椅子が邪な感情を持っている者をここに入れないようにしておりますのですよ」
「ま、魔王様!このような宰相の妄言は聞き入れないでいただきたく思います!」
しかし、人語を話す豚の相手をさせられて宰相も大変だな。我が直接話せれば問題ないのかもしれないが。
豚の鳴き声が喧しいので椅子の機能を少々強くする。
すると喧しい豚の鳴き声が聞こえなくなり、代わりに壁に何かが押し付けられるような音に変わる。
〈宰相、奴が気絶したらこの紙を張り付けて城から追い出せ〉
「かしこまりました」
そう言って宰相に渡した紙には我の文字で、
【この者、我に反逆の意志有りとみなす。
魔王・ルシフェル】
と書かれていた。
筆や紙等まだ持てないから先ほどの様に神のせいで身についてしまった魔法で書いたものだ。
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