1274人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前で自分を抱く初老の男性も、自分も一言も喋らぬまま暫くの時間が経った。
コンコンコン
パタン
「失礼します。宰相様、執務が押しておりますので…」
……第三者の声がして、漸くパニックから抜け出せた。
そして自分を抱く男もその第三者に対して体ごと向き直る。
第三者は声からして女性だというのは分かっていたが、服装から察するにメイドだろう。
視界がボヤけているせいで目に魔力を流さなければ全く見えないが。
「…宰相様、そちらの赤ん坊は?」
「信じられないかもしれないが、魔王様の椅子が光った後にいつの間にか椅子の上にいたのだ」
自分を抱く男は宰相か…
今まであの神のせいで苦労していそうだな。
「それでは正式な魔王様なのですね」
「そうなるのだろうが…赤子で大丈夫なのだろうか…」
「ちょっと失礼します」
今度はメイドに抱かれたが、抱き方はメイドの方が上手いらしく、先程よりも体が楽だ。
最初のコメントを投稿しよう!