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 夢中になってこの曲を弾いているうちに、幼い頃近所に住んでいた時計職人に懐中時計の中身を見せて貰ったことをエンリは思い出した。  小さな部品が危ういバランスで絡み合う間から生まれ出た深い闇、その奥からちりちりと金属が擦れる微かな音が時を刻む様子を見つめていると、時計の中に自分が吸い込まれるかと感じたものだった。
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