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「上がった! これで今夜の花火大会は大丈夫だね!」
「そうね、良かった。途中で大雨が降り出したら、目も当てられない……」
「何?」
「降らなくても、気の毒な結果になった事を思い出したわ」
「はぁ?」
「今にも降りそうな曇天の日に、花火大会を見に行った時、降ったら困るなと思いながら見ていたけど、とうとう最後の一発までは問題無く見られたの」
「良かったじゃない。何が問題なの?」
「最後の一発が、とっておきの大玉だったのね。だから上がる高さも、それまでの花火とは段違いだったの。火球が、ヒュルルルルーって音を立てながら厚い雲の中に吸い込まれて、少ししてドン、パーンって音が聞こえたわ」
「まさか……、音だけ?」
「そう。無駄に散った大玉に、皆苦笑しながら帰ったわ」
「輝けなかった花火を想って、涙が出そう……」
「でもこの晴れ方なら、そんな心配は無用でしょ」
「そうだよね」
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