サルディニア王国の事情

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◇  広がる畑、のどかな風景。田舎という言葉を体現するような眺め。  若い男が一人で道から農作業を見ている。肌は白く、農家の者ではないのはすぐに解った。  細身だが筋肉質、体を鍛えようとしてなった体つき。素朴ではあるが上等な生地を使った装い。 「おーい、あんた見ない顔だね。どうかなすったか?」  少し先の畑から老年男性が声をかける。不審者には見えなかった。何か用事でもあって使いでやって来たというのが彼にはしっくり来たらしい。 「こんにちは。このあたりって何がとれるんです?」  にこにこしながら歩いて近寄る。老人は遠くの畑を見ながら「一帯麦畑じゃわい」あご髭をしごきながら答える。  サルディニア王国が誇る特産品、金麦だ。夕陽に照らされるそれは輝いているように見えるというのが由来。 「とても美味しいらしいですね。是非とも食べてみようと思います」  人当たり良さそうな青年の台詞に、老人は肩をすくめて指摘をする。 「お前さんは余程遠くから来たようじゃな」  食べてみる。その言葉への反応だ。
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