95人が本棚に入れています
本棚に追加
拳を握りしめて腹の底から声をふり絞る。
情けなかった、誰かに頼らなければならないことが。
辛かった、全てを失ったことが。
悔しかった、届かなかったことが。
「あなたの心あたしに届いたわ。良いわよ力をあげる。こんなに高揚出来たのだから、お返しをしなきゃね」
フラが左手を突き上げ詠唱を始める。平穏魔法を使った時に気づいたものが多かっただろうが、彼女の魔法はサルディニアの物ではない。別系統だ。
「アンプリファクション=エキスパンション=ストレントニング!」
「さ、三重詠唱!」
――馬鹿な、そんなことが!
対象はシャルロット、精神が研ぎ澄まされたかのような感覚を得る。魔法威力が強化され、範囲を拡大、効果の増幅までを得る。
「トール!」
何もない空間から紫の剣が現れ宙に浮遊する。煙とも揺らめく炎とも言えないようなオーラを放ちそこに存在している。
「感覚の投影よ」
「承知」
シャルロットの神経がパンクしそうになる。目がいくつもあるような多角的な情報が一気に頭に流れ込む。
それだけでなくありとあらゆる感覚がダブって感じられるのだ。
「っぐ、ぐぁぁぁあ!」
――な、なんだこれは! 体がおかしい! 頭が変になる!
最初のコメントを投稿しよう!