復讐と、彼女の祈り

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 拳を握りしめて腹の底から声をふり絞る。  情けなかった、誰かに頼らなければならないことが。  辛かった、全てを失ったことが。  悔しかった、届かなかったことが。 「あなたの心あたしに届いたわ。良いわよ力をあげる。こんなに高揚出来たのだから、お返しをしなきゃね」  フラが左手を突き上げ詠唱を始める。平穏魔法を使った時に気づいたものが多かっただろうが、彼女の魔法はサルディニアの物ではない。別系統だ。 「アンプリファクション=エキスパンション=ストレントニング!」 「さ、三重詠唱!」  ――馬鹿な、そんなことが!  対象はシャルロット、精神が研ぎ澄まされたかのような感覚を得る。魔法威力が強化され、範囲を拡大、効果の増幅までを得る。 「トール!」  何もない空間から紫の剣が現れ宙に浮遊する。煙とも揺らめく炎とも言えないようなオーラを放ちそこに存在している。 「感覚の投影よ」 「承知」  シャルロットの神経がパンクしそうになる。目がいくつもあるような多角的な情報が一気に頭に流れ込む。  それだけでなくありとあらゆる感覚がダブって感じられるのだ。 「っぐ、ぐぁぁぁあ!」  ――な、なんだこれは! 体がおかしい! 頭が変になる!
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