復讐と、彼女の祈り

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 上着には様々な勲章がつけられている。装飾がついた礼服を脱ぐと脇に放る。  下着も同然になるが構ってなどいられない。 「ほっほ、王女殿下の命乞いですか。殊勝な心掛け、我妻になるならば助けてやりましょうぞ!」  卑猥な視線を向けてくるが、シャルロットは意に介さない。 「黙れ下郎、今すぐ貴様にも罰を下してやる」  汚いものを見るかのような冷然とした表情。思わず身震いしてしまいそうになる。 「ヒューリを強く意識して」  シャルロットは目を瞑り、赤い光を意識に定める。  目に見えているわけではないのに、妙に鮮明な姿形が浮かぶ。 「相手をどうしたいかを考えるのよ」 「ふん、国王と勅使だけは殺すな。他は構わん、やれ」  軍務大臣の命令で重装歩兵が足を速める。宮廷騎士が圧倒的不利な差でも逃げずに抗戦した。  ――恐怖に苛み、絶望して死ね!  自らをかきむしり、呼吸すらままならぬ恐れを願った。 「トール!」 「承知」  紫の光の周りに、黒い煙の塊が浮遊し始める。光源の先に何故か影が無い。
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