復讐と、彼女の祈り

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「さあシャルロット」 「うむ。……黒い煙が……」  ――奴が憎い、一人だけ生きているのが許せない、悶え苦しめ!  負の情念が塊となる。黒い煙が重装歩兵らにまとわりついた。 「な、なんだこれは!」  切りつけても、火をぶつけても消えない。揺らぎもしない影。  ダークシェード。生き物にある本能の恐怖。歩兵らが怯えているのが感じられた。  鈍くなりすぎた人間も本来は生まれ持っていた感情。 「ひっ、ひぃぃぃ!」  軍務大臣が床に頭を打ち付けて、よだれを垂らしてうずくまる。  目は曇り、やがて顔を歪めたまま呼吸困難に陥り、苦悶の表情のまま動かなくなる。  発狂して息絶える姿は、見るもの全てに嫌悪感を与えた。 「……これが精霊術」  ――魔法とは全く違うのだな!  ふとシャルロットの視界が閉ざされる。何かを被せられたかのように。 「いつまでも乙女の柔肌を見てるんじゃないわよ。ばーかばーか、ばか吸血鬼亜人」  声だけが聞こえるが、皆どこから聞こえているか解らない。 「フラだっけ、君凄いね脱帽だよ」  風の精霊を使い空気の振動を限定空間に絞る。トリュッケン、シャルロット、フラの三人だけ。 「あたしはシャルロットの意志を尊重しただけよ。あんたはきっちりと国を導きなさい」
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