たった一人の国の女王

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 自身の過去など滅多に喋らないフラウが遠くを見て語る。 「苦しい時は一緒に耐えて、楽しい時は一緒に笑って、成人した時には泣いてくれて」 「それは妾も同じ。家族とは違うが同じように大切な者だ」  ――恋心ともまた違う、だが憧れとは言える。  共通した境遇、暫し無言で空を眺めていた。つい先ほどまで死線にあったなど思いもよらない。 「シャルロットはもう一度じいに逢えるって言われたらどうする?」 「万難を排してそうする」  ――だがもうこの世にはおらぬのだ……。  仮定の話で盛り上がることは出来なかった。ただ虚しさが襲ってくる。 「ならそうしましょ!」 「なに?」  まじまじとフラウの顔を見てしまった。冗談で言っているようではない。 「死霊術、ネクロマンシー。これを極めれば可能よ」 「それは……詳しく説明してくれるだろうか」  ――死者を生き返らせる?  禁じられた魔法。およそどこの世界でも忌避される死者を操る術。  それゆえ詳細は闇に覆われているが、先ほどアンデットを見たので存在は肯定出来た。
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