◆・第一章・◆

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◆・第一章・◆

ある男の話をしよう あれは……とんと昔むかし あいつは五つ上 オラは十かそこらの頃だったかなあ  村のはずれに二軒並んだ  小さなあばら家に暮らす  幼馴染み 早くに てて親を亡くしたオラん家に あいつの家族はよくしてくれた おっ母を亡くした時だって あいつの家族はよくしてくれた オラが甘えすぎたんだろうなあ あいつは ある時から 村の悪いヤツらと つるみ出したんだ それでもオラは  実の家族みたいに思ってたから 自分とこの田畑を適当に済ませ あいつん家の手伝いをした オラは恩返しのつもりだったんだがなあ 村の衆は 無責任に笑う こりゃあ 誰が 息子か  わかんねえな……と オラは決まって 怒って言った 何を馬鹿げたこと言うだ あそこの息子は 兄ちゃんだ ふざけたことぬかすと 許さねえぞ オラは本気で言ったって ガキが何言ったって 村の衆は 笑うだけ 兄ちゃんは オラたちを睨んで 悪いヤツらと 唾を吐いた オラは ただ…… 立ち去る背中を見ながら 兄ちゃんと 昔みたいに 笑いたいと 願っていた
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