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「お願いします。我々を見捨てないでください。」
機械の男性の声は、細かく震えていた。
おそらくプログラミングから発せられるであろうその声も、私には真実に思えた。
…そうなのだ、彼らには私が必要なのだ…。
「おそらく、あなたは自分が監視されていたかもしれないと不快に思うかもしれません。しかし、誓って我々はあなたのプライベートな部分にはなるべく立ち入らないようにしてきました。それはあなたのおじいさまの命令であり、あなたの意思を尊重していたからの行動でもあります。」
それはわかっていた。
そうでなければ、この事態に説明がつかないからだ。
しかし私はその事実に絶望せざる負えなかった。
そうして、私は機械の男性にたずねずにはいられなかった。
「本当に人類は私以外、誰もいないの?」
すると、機械の男性は静かに、だが確実にうなずいてみせた。
私は唇を引き結んだ。
そうして、機械の男性は喪服の襟を正すと再び口を開けた。
「もうまもなく、あなたのおじいさまの遺体が来ます。形式的には通常の葬儀と同様にさせていただきます…ですが、あまり動揺なさらないでください。我々は、どこまでも人類最後の一人であるあなたのために、この日常を続けて行くしかないのですから…。」
そうして、私は思い出した。
数時間前におじいさんが亡くなったこと。そうして私が仕事場から病院に駆けつけると葬儀場の支配人としてこの男性が話かけてきたこと。
…そうして、この惨い事実を知らされたこと…。
私はいつしか強い後悔の念とともに人差し指を握りしめていた。
そうだ。彼らは確かに私の生活の一部しか監視していなかったのだ。
私はそれを恨まざるおえなかった。
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