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まさか……手作り?
と思いながら先にベンチに座った大石君の隣に腰を下ろす。
「はい、部長の分です!」
包みに包まれたお弁当箱ぽいものを渡された。
大石君の手元を見ると、同じ柄の色違いの包みに包まれたお弁当箱を持っていた。
「味はたぶん大丈夫です! 大学時代にもしょっちゅう作って友達にあげたりしてたんで!」
「へぇ」
大石君は自分の分のお弁当箱を開け、すぐに食べ始めた。
「え、いや、なんでこんなのくれるの?」
「なんとかを掴むには胃袋からって言うじゃないですか」
「なんとか?」
「なんだっけ? まぁいいや。部長バツイチ独身だって聞いたし、攻めるならここかなーって」
僕は手に持っているお弁当を見つめた。
「あの、僕、部長といってもあまりお金はないですよ? 住宅ローンでほとんど消えてるんで」
大石君がキョトンとした顔で僕の顔を見る。
「お金なんか、狙ってないですよ?」
ま、まぁそういうしかないよね……
「それより、早く食べてみてください!」
せかされて、そろそろと包みを開け蓋を開ける。
料理本の表紙になるような弁当の中身が出てきた。
「汁物もありますよ~」
大石君は手提げから太い水筒を取り出した。
「じゃ、じゃあいただきます」
蓋についていた箸をとり、お弁当を食べる。
あ、ちゃんと手作りって感じの味……
「部長、普段ごはんどうしてるんですか? 夜とか」
「スーパーとかで適当に、ですねぇ」
「スーパーのお惣菜とかって、味濃すぎません?」
「うーん、でもそれに慣れちゃってるから。あんまり気にしないかな」
「ダメですよー、出来合いのモノって塩分すっごく多いんですよ?」
大石君は自分の分の弁当も食べながら、水筒から味噌汁を注いで僕に渡してくる。
「あ、ありがとう」
「私、この公園で会社に就職する前に部長と会ってるんですよ」
「へ? そうなの?」
「その時も部長、コンビニのパンとか食べてたから、気になってたんです」
「気になるって」
「私部長と結婚したいんです」
「ぶはっ」
飲んでた味噌汁を噴いた。
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