6人が本棚に入れています
本棚に追加
だけど、大石君を見ると、能面のような冷たい顔をして静かに自分の弁当をしまいはじめた。
そ、そんな反応想像してなかった……
「わかりました。宮部さんにはちゃんと言っておきます。私先に帰ります」
そう早口で言うと、さっさと歩いていってしまった。
僕の弁当はまだ膝の上にあるのに。
え? 怒った? 僕が注意したほうなのに?
その反応が、まるで大石君じゃないような反応だったから、面食らってしまった。
その後、大石君は今までのように僕に気軽に話しかけたりはしなくなった。
こんな簡単に嫌われるとは思わなかったが、まぁ、今までが異常だったので、元に戻ったと思えば、なんともない。
なんともない、はずだった。
お弁当箱は洗って返したが、とてつもなくそっけない態度で受け取られ、また月曜日がきたときには、当然のようにお昼は別々だった。
結婚したいとまで言ってくれたのに?!
と、突き放したのは自分のくせに、年甲斐もなく憤慨してしまった。
いかんいかん。もう忘れよう。
忘れようと思ったのに、むしろもっと意識してしまっていた。
あの時の能面のような大石君の顔が忘れられない。
普段あんなににこにこしているのに……。
ずっとそんな想いを抱えたまま過ごしていたら、ビアガーデン飲み会の日がやってきた。
こんな気分で飲み会に行ってもなぁ、と思った僕は、居酒屋に向かう途中で元妻にメールを打った。
『うちに来てよ。終電前には帰る』
最初のコメントを投稿しよう!