第17章 わたしの娘

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その一方で何故か立山くんのことはわたしを絶対に守ってくれる、しっかりした強い存在と思い込んで疑わなかった。むしろ彼の方こそ危ういバランスを抱えた、傷つきやすい人だったのかもしれない。本当はもっとこっちからその心の内を推し量って、フォローする必要があったんだ。 わたしは気がつくのが遅すぎる。最初にこの人はこう、って決めつけちゃったらそれを見直すこともしてないし。 「…敵わないなぁ」 「え、何?」 何をきっかけに復活したのか再びわたしをベッドに押し倒し、甘えるように全身をすり寄せてくる大型愛玩犬の重みに耐えながらぼそっと小さく呟くと、よく聞こえなかった、という風に訊き返してくる。その返事を待たずにのしかかるように身体を上から抑えつけ、耳に舌を這わせながら甘く囁く。 「言っとくけど、さっきのはあくまでも仮定の話だからね。ちゆは他の男のこと、今好きになんかなったら駄目だよ。…だって、ちゆの身体。…ここ」 そう言いつつ脚の間を割るように押し開き、敏感な場所を蕩かせるように指の腹で弄る。耳に熱い息とともに言葉を吹き込んだ。 「…ここ、俺のこと好きだろ。…世界で一番」 「あぁっ…」 身体の奥の奥までびくびくさせられる。…だって、初めてから今まで全部こいつに仕込まれた身体だし。これが好きになっちゃったのは仕方ないよ…。 「俺だけだろ。ちゆのここ。…俺だけって言って、ちゃんと」 ああ、そんなに。…指挿れて奥、かき回さないで…。 「あっ、嘉文…。ヨシフミだけだよ、あたしの、…そこ…。ああ…」 あっという間にかき立てられ、欲情させられてもう何も考えられない。何だか結局、他の人を好きになってもいいのか悪いのかよくわからなかった。…でも。 わたしは大きく息をつき、腕を伸ばして彼を引き寄せ、求める。 …本当に、敵わない。何もかも…。 大学は夏休みに突入した。わたしは相変わらずだ。特別帰省するとかもなく、寮の竹田の部屋と瀬戸さんとタクの家に交互に泊まる毎日。どうにも竹田のご家族に申し訳が立たないので、早々に奴を愛知の実家へ強制送還したが、二週間ほどで音を上げて戻ってきてしまった。知らないぞ、お家の方のわたしへの印象に悪影響を与えても。一方下の家の方でのわたしは、タクの家庭教師をその後もちゃんと続けている。瀬戸さんとの距離感も変わらない。あの時のわたしの意図については知らないふりをしてくれるみたいだ。
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