第17章 わたしの娘

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実際のところ、あれから数日の間は何もなかったよう周囲に気取られずに過ごすので精一杯だった。 午前中のうちに大学に戻り、どうしようかと悩んだ挙句に結局は勝手に主不在の竹田の部屋に入り込んだ。寮に自分の部屋がないわたしには、こういう時に完全に一人になれる空間がない。今までそれほど不便に感じたこともなかったが、やっぱり困る局面ってあるんだな、と身に沁みた。 それでも恐らくこんな時間に竹田が寮の部屋に戻ってくる確率はそれほど高くないはずだ。そう自分に言い聞かせベッドの上でうずくまるように丸まって眠った。こんな昼前から、とは思ったが、意外にも吸い込まれるようにあっという間に寝落ちしてしまった。 思えば昨夜はほとんど眠れた気がしない。睡眠不足に加えてさっき受けた心身のショックで一時的に全身の機能がスリープ状態になったような感じだったのかもしれない。 「…おい、どうした。どこか具合悪いのか」 肩を軽く揺すられて気がついた。竹田が蒼ざめた顔でわたしを見下ろしている。部屋の中はまだ明かりを点けるほどではないが、やや薄暗い。夕方の光だ。結局一日を棒に振ってしまった。 「わかんない。…なんか、身体がやたら重くて」医者にかかれって言われたら困るな。と思いかけて、でもあれは結局未遂だったんだから。身体には何の危害も加えられていないんだし、痕跡なんかどこにもない。 なかったのと同じことだ。だから、医者に何処を見られても大丈夫。 彼に累は及ばない。 「顔色すごく悪いぞ。…熱はどうだ」 上半身を起こしたわたしの肩を抱き寄せ、額に手を当てる。ひんやりしていい気持ちだ。目を閉じてその腕に体重を預けた。 「…少し熱っぽいかな。医務室行くか?この部屋、体温計なんかあったかな…」 心配げな声に首を横に振る。 「大丈夫、多分。こうやって休んでいれば…、明日にはよくなると思う」 「もしかして、今日ずっとここにいたのか?」 わたしは目を閉じたまま大人しく頷いた。 「なんか、下から登ってくる途中で調子おかしいなぁと。…ちょっと横になろう、と思っただけだったんだけど。気がついたら今、こんな時間で」 「風邪かなあ。それとも疲れてるのか、舞台の準備も忙しくなり始めてるし」 心配がにじむ声で呟き、わたしの髪をそっと何度も撫でる。 「朝から何度LINEしても連絡取れないし。板橋には調子悪いからサボる、って連絡があったって聞いて」
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