第17章 わたしの娘

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ただでさえ立山くんを永久に失った。自業自得なのはわかってるけど、この先もずっとそばにいよう、と約束を交わした人にあんな風に軽蔑されて、見放されて。…この上、竹田にまで失望されて嫌われたら。 抱えた膝の上に滲んだ目頭を強く押しつける。とてもじゃないけど、平静でいられそうにない…。 いつまでも凹んでる暇なんかない。一晩寝て、翌日にはわたしは平常運転に戻った。舞台美術総監督としては絶えず何かしらすることがあるし、タクも帰ってきて瀬戸さんの家もいつも通りの賑やかさを取り戻した。竹田にも特に何かを気取られずに済んだらしく、それは少しホッとした。 一見全く今までと何も変わらない日々だ。立山くんとわたしが離れたことは目で見ては取れない。彼はもともと学校にはほとんど顔を出さないし、何ヶ月も顔を見る機会がないこともざらだ。今ここに彼がいないことは何ひとつ証明してはいない。メールもLINEもあの後一度も来ないけど、それだって正直なところいつも通りだ。 決定的に取り返しのつかないほど変わってしまったことは、わたしと立山くん本人しか知らない。 あの日のことを思い出すのは辛かった。その後も長いこと、意図的に蓋をして過ごした。それでもだいぶ経ってから不意に夢に出てきたりする。冷たい怒りに燃えた目、突き放すような声。その反面荒っぽい欲望を隠さない熱い身体。突き上げるような恐怖に打たれたように目が覚め、震えながら息を吐く。どうやら覚醒時に力ずくで抑圧してる分、その力が弱まる睡眠時に反動で生々しく出てきてしまうみたいだ。 竹田の隣で寝ている時はそれ以上考えないよう無理に断ち切ってしまうが、瀬戸さんの家の二階の部屋なら一人で思う存分泣ける。人目がないのをいいことにわたしは気が済むまで涙を流した。 あんな風に冷たく軽蔑されて、拒絶された。でも、わたしが悪いんだ。立山くんを責めることなんかできない。 …正直なところ。瀬戸さんに抱かれたい、と思い詰め、覚悟を決めてあの人の許に赴いたこと自体を悪いとは思ってない。 寝床の中で自分の身を持て余すように抱きしめる。あれは仕方なかったんだ。そうしなければ気が済まなかった。結果スルーされたけど、それは現実として受け止めるしかない。滅多にないチャンスに何もトライしなかったらやっぱり後悔して、何かを引きずることになっただろう。
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