第17章 わたしの娘

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どんな些細な芽もないことをちゃんと確認できた。落ち込みはしたけど納得もしたし、そのこと自体は意味があったと思う。 わたしが罪悪感を感じてるのはそれとは別のことだった。 立山くんの気持ちを顧みることをしなかった。わたしはあの人に安心し、頼りきっていた。 いたたまれない気持ちで思わず寝返りを打つ。…彼は大人で落ち着いていて、わたしのことも理解してくれてる。竹田の存在にイラっとすることもあるみたいだけど、恋愛感情もないのに奴との関係を続けてることも、望みのない想いを瀬戸さんに抱いてることも全て知った上で受け入れてくれている。そう思い込んでそれ以上考えようとしなかった。 この先、ずっとそばにいるなら、いずれは心身とも共有したい、と明かりを落とした部屋の中で申し出を受け、今じゃないけど自然とそういうことになれば、と答えた。あれは別にかわしたわけじゃなく、本気でそう思ってたことは確かだけど、それで引き下がった彼の内面を想像することもなくこれで話は終わった、と勝手に安堵して片付けてしまった。 実態は立山くんだってわたしと同じ二十歳そこそこの年齢、思えば普通の男の子に過ぎない。並んだベッドに横になってああやって申し出る時には勇気を振り絞ったはずだ。 そしてそうやって一度口にしてしまったら。もうもとのただの友達じゃない。彼がそう感じるのだって自然だろう。わたしたちは何かの約束を交わした仲だって受け止めてもおかしくない。 なのに、わたしは今までと同じ感覚で、竹田のことも瀬戸さんへの想いも彼の前で平気で晒し続けた。全部承知して受け止めてくれる友達。わたしのことを理解していつもどんな時も力になってくれる。安心して寄りかかれる、何事にも動じない強い存在…。 そう思い込むあまり体重をかけ過ぎた。いつも頼るばっかりで、彼が何を感じてるか、何に耐えて自分を抑えてるか想像することもなかった。 わたしは彼のことを全然わかってなんかなかったんだ。その上その自覚もなく、特にこれ以上理解しようともしなかった。 向こうから寄り添ってくれることに満足し切っていて、こっちから歩み寄ろうとはしなかった。彼はどんなに孤独だったろう。 並んで歩いてるつもりでも、わたしは一人で歩きたいように勝手に歩いてるだけだった。向こうがこっちに歩調を合わせてくれてることに気付こうともしてなかったんだ。
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