第17章 わたしの娘

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わたしはぱたり、と大きく手足を開いて仰向けに天井を見上げた。ああ…、最悪。 竹田のことは傷つけてはいけない、守らなきゃいけないものとして責任を感じてたし、一生懸命配慮してたと思う。でも立山くんに対してそういう感覚で接したことはなかった。実際には彼だって心が波立つし、傷つく。そんな当たり前のこともわかろうとしなかったなんて。 自分のエゴイスト振りがつくづく嫌になる。こんな奴ともう一緒にいられない、と見切りつけられてもしょうがない。 まぁ、どっちにしろ無理があったんだろうな。自嘲的に考える。心も身体も今は別々の人のものだけど、いずれはもしかしたらね。そんなこと言われたって。どうして今じゃないんだ、って普通思うよな。 相手が立山くんで、向けられた先が自分だったから、どうしてもリアルに感じられなかった。何だか馬鹿みたいに自惚れてるような気がして、真剣に考慮できなかった。 そう言い訳しても虚しい。彼を傷つけた事実は変わらない。 あの人の前で、好きな人が抱いてくれなかったとあからさまに落ち込んで、あんたなんかに何がわかるの、と八つ当たりまでしてしまった…。 大きく息をついて目を閉じる。わたしに関しては自業自得、放り出されても仕方ないけど。 立山くんは結果わたしを永久に失って孤独になってしまった。それは大丈夫だろうか。今は一人かもしれないけど、いずれは誰か信頼できて全部受け止めてくれる存在に出会えるに違いない。そう思うとやっぱり辛くて、胸の奥をすっとナイフで掠られたような気分になるけど。 彼がいつかわたしなんかよりきちんとした、何もかも行き届いてる最高の恋人を得られるようにこれからは遠くで祈るしかないんだ…。 「ちゆ、なんか最近元気ないな」 「え、そう?」 わたしは思わず両頬を押さえた。内面の奥の方はともかく、表面上は今までと同じように行動してるはずだ。でも竹田は侮れない。一緒にいる時間も長いし、わたしに向ける注意も半端じゃない。些細な変化に気づかれてもおかしくない。 「この前の疲れはおかげで取れたと思うけど。…何でだろうね。毎日頑張ってるつもりだけど」 そう言うと、奴は宥めるように優しくわたしを抱き寄せた。 「だから、頑張り過ぎなんだよ、お前は。いくらでも全部自分で抱え込もうとするから。少しは手を抜けって、舞台美術だって板橋たちにもちゃんとサポートしてもらえるだろ?もっとリラックスしなよ」
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