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を崩し穴の中へと真っ逆さまに落ちていく。
落ちたくない一心で手をこれでもかという程伸ばした。無情にも手は淵にかすることもなければ、手を引き上げてくれる人もいない。僕はこのままどうなってしまうのだとうか。ふい恐怖と絶望が
頭をよぎる。
僕は呼吸するのも精一杯の中、光が差し込む唯一の場所。もとい僕が落っこちた穴にむかって手を伸ばし続けていた。いっこうに穴に手が届くことはなく、あんなに大きかった穴は今では指輪
くらいの大きさになっている。あぁ手を伸ばせば届きそうなのに届かない。
この下には本当に底などあるのだろうか。僕はどのぐらいこうしているだろうか。先ほど指輪
くらいの大きさだった穴は星よりも小さい。
もう何十年もこうして穴に落ち続けているように感じる。感じるが本当は一秒も経っていない
のかもしれいない。すでにどちらが上でどちらが下なのか。前も後ろもわからない。僕はすべてが
どうでも良くなり目をつむった。
しばらくすると背中に何かがあったような感触がする。土だ。僕は念願の穴の底にたどり着く
ことができたのだろうか。それとも途中で死に絶え地獄の釜の底にでもいるのだろうか。
今となっては自分が生きているのか、死んでいるのかさえもわからない。
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