カクラサマ

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坂東よりもさらに奥地の霊場を目指していた六部は、遠い野と書いて遠野という目を開けば山々と田んぼしかない地で足を止めた。  霊場に法華経を納めるためではない。村の子どもたちがあろう事か木彫りの座像をぶんどり つかみ、玩具のように路上を引き吊り回して遊んでいるのだ。なんと罰当たりな所行だ。  子どもたちが座像を川に投げ入れたり、いたずらをどんなに施しても村の大人たちは誰ひとりと して止めようとはせず、畑を耕すばかり。 「これ、罰当たりなことは止めぬか」  座像は目も鼻も摩滅していかような神仏かわからぬが、まがりになりも祀られていたはずだ。 神仏が許しても私はそれを許せなかった。 「おじちゃん。どうしてだめなの」 「いいか、神仏は祀られるべき存在で粗雑に扱ってはならぬものだ。我々人間が御手をふれては ならぬものなのだ」 「はぁい」  六部に諭された子どもたちは、物寂しそうに座像をもといた場所に戻し、目で追えぬほどずっと 遠くにいってしまった。  ひと仕事を終え溜息をつくと、それまで六部に微塵の関心も示さなかった村の大人たちが 異様なほどにどよめき立ち口々に 「カクラサマの祟りが起きる」  と申している。あま
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