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「あ…」
「ん?」
「お化粧着いちゃう…ワイシャツ…」
「今それ気にする?」
「気にする…」
「俺気にしなーい。もう俺今日上がりだし。
あとで洗ってもらうから、真子さんに」
…え?私が洗うのね?あなたのワイシャツ…
「それに向井くん、誰か来たらマズいかも…」
社食の前だし、噂好きな人、多いよ?ここは。
「いいじゃん、悪い事してるワケじゃないんだし」
「そうだけど…」
「怖い?噂されるの…」
無邪気な笑顔でそう聞く彼に「ううん」と首を振って見せる。
「じゃあいい?他に心配な事はない?」
「ありません…あ、ある!」
「えー!なに?」
「キズモノのくだり…」
「もー…ちょっと黙って?」
「ごめん…」
「心配しすぎですよ?真子さん」
呆れたように笑った彼と目が合って、思わず視線を逸らした。
近い…近いよ…
「好き…」
「うん…」
耳元で囁く声に、顔が熱くなる。
「椿真子さん?」
「はい…」
顔を上げると重なる唇。
熱くなった耳の後ろに差し込まれた優しい指が、私の髪を梳くように撫でる。
夢じゃないんだ…私の中で眠ってた記憶。
ずっとずっと、待っていてくれた王子様。
「良かった…会えて」
「ん?」
腕の中で小さく呟く私に、「なあに?」って優しく微笑む君。
光の中で見失ったあなたの手を もう一度しっかり握りしめる。
もう離したくない、君が大好きだから。
「そっかそっか、君がねー?」
「ちょっと、なんなの?真子さん」
「なんでもない!」
そうだ、あとでちゃんと言わないと。
「あの時はありがとう」って。
でも君が…
そそっかしい“新人君”が、私の夢の王子様でしたなんて…
悔しいから、絶対に言わないけど。
『嘘でしょ!?新人君!』…Fin
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