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光…
暗闇に射す一筋の光。
逆光の後ろ姿…
「待って?置いて行かないで?」
私の前を行く彼を呼び止めると、立ち止まり振り返る。
「行かないよ?大丈夫、早くおいで?」
手招きする彼に歩み寄ると、にっこり笑って…って
…多分ね?逆光だからよく分からないけど…
私の頭を大きな手で優しく撫でてくれる。
「怖い?」
そう聞かれて、私は首を横に振る。
「行こう!」
すると、私の手を取り走り出す彼。
しっかりと繋いだ手。
長身のその後ろ姿は、背筋がシャンとしていて足が長くて、それはまるで王子様。
「ほら、早く!」
急かされて、でも足が重たくて上手く走れない。
…当たり前だよ。だって私普段運動なんてしてないし、そもそも足の長さが全然違うし…
「もう無理…走れない」
ヘトヘトになって足を止めると、振り返って(恐らく)爽やかに笑った彼の、(恐らく)真っ白い歯が…
…ほら、逆光だから定かじゃないけど…
ピカーン!と突然、物凄い勢いで光り出して、辺りは目が眩みそうな程の目映い光に包まれる。
「見えない、どこ?」
「大丈夫、ここにいるよ…」
なにも見えず、手探りする私の手を 光の中の彼が優しく握る。
「待ってるよ、ずっと。早くおいで?」
「待ってるって?」
「ここにいるから、待ってるから…」
次第に小さくなっていく声と共に、繋いだ手が離れていく。
「待って?…待ってよ…」
光が消え、暗闇の中に一人、取り残された私。
悲しくて涙が溢れ、大声でワンワン泣いた。子供みたいに。
と、そこで…
けたたましく鳴り響く、目覚まし時計のアラームの音。
「はぁ…また…疲れる夢…」
溜め息を吐きアラームを止める。
寝てて疲れるってどういう事?
そもそも誰なの?あの王子様的な?いつも私の夢に出てくる人は…
毎回同じシュチュエーションで顔が見えなくて、最終的に置いて行かれるの。本当切ない、意味分かんない。
でも…
右手を見詰め、ぼんやり思い出す。
あの感触、繋いだ手の温もり、頭を撫でる優しい手の平…
ずっと昔から知っているような、知らないような…
どこかで会ったような、会っていないような?
「うわ!遅刻する!」
慌てて飛び起きて、支度してお店に急ぐ。
その頃にはいつも、夢の事なんて忘れてるんだけど。
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