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「おはよーございまーす」
(ガタガタ!ガッシャーン!)
「え?…何?」
「…いってぇ…」
「ちょ、向井くん?何?大丈夫!?」
「うぅ…」
朝一、私の目に飛び込んできたのは、開店前のお店の厨房に散乱する割れたコーヒーカップと、呻き声をあげながらうずくまる向井くん。
「ちょっと…嘘でしょ?朝から何してるの?君は…」
腰を抑えて悶絶する彼に呆れながら歩み寄り、腕を支えて立ち上がらせる。
「…やっちゃった、テへ♪」
「テへ♪…じゃないわよ!何してるの?もぉ…」
「すいませ~ん…」
ここは大型ショッピングモールの中の小さなカフェレストラン。
今日は早番で、来てみたらこの有り様。
他にする事は山程あるけど仕方なく、しょんぼり肩を落とす彼と、散乱したコーヒーカップを片付ける。
「俺掃除してたんですよぉ…
そしたらここの角に股間ぶつけてぇ。で、痛ってー!ってやってたら、後ろの棚にぶつかってぇ…」
「こ、股か…」
何故?え?何故君は掃除しててシンクの角に股…その…そんな所をぶつける!?
「もう、いいから箒とちりとり!」
「うはは!はーい、すんませーん!」
まったく、おっちょこちょいにも程がある。
一体誰?あんな落ち着きない子を雇ったのは!
あ、店長か…
彼は最近この店に入った新人君。
もう既に就職が決まったお気楽な大学四年生で、
ハキハキしてて仕事も覚えるのが早くて、気も利くしやる気もある。
そして何と言っても、背が高くてスタイルが良くて、制服の白いワイシャツと黒のパンツに丈の長いカフェエプロンがよく似合っていて、愛想もあって可愛くて、女性客に非常にウケがいい。
それはそれは完璧、って言いたい所だけど、ただ一つ…
ご覧の通りそそっかしい…
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