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本当に君は残念な子だね?向井くん…
そんな事を考えながら、割れた破片をとりあえず手で拾う。
「真子さん!もう大丈夫です!俺片付けるから」
「うん、でも…ほら、棚の下に…」
箒とちりとりを持って来た彼をチラッと確認して、箒じゃ届かない様な狭い隙間に落ちていた破片に手を伸ばす。
もう少しで届く…そう思ったんだけど。
「…痛っ…たぁ…」
「え!大丈夫!?」
マズい、と思って棚の下から手を引いたけど時既に遅し…
鋭く尖った破片で切ってしまった指先から、ジワジワと血が滲む。
「うわぁ…ヤバい!」
それを見た向井くんが、慌ててキッチンペーパーで止血しようと、私の人差し指を握る。
「病院行きます?あ、救急車!救急車呼んだ方が良くない?」
「大袈裟!やめてよ、こんなの…」
「でも、ほら…血が…」
ペーパーに血が滲んで、彼が心配そうにそっとそれを捲って傷口を確かめる。
「うわ、これ結構ザックリいってるよ?…どうしよう、俺傷苦手…倒れそう」
「だから大丈夫だよ?見ないで?自分で出来るから」
「いいやダメですよ、危ないから!抑えて!」
危ないから?何だろう、意味が…
まぁ、心配してくれてるのかな?
「どうしよう…ごめんなさい…」
青冷めた顔で、傷が苦手と言いながらも、私の指をペーパーでギュッと握ってくれている彼に、ふと何かを思い出す。
この手…どこかで…
「俺キズモノにしちゃった、真子さんの事。どうしよう、責任取んなきゃ…」
「は?」
「俺何でもしますから、キズモノにしちゃったから…」
「あのさぁ、キズモノって意味分かって…」
はぁ…違うよね?絶対違う。
君が私の夢に出て来る王子様だなんて、思った私がバカだった。
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