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あの子本当に大丈夫?
流石に豆はマズいよ?結構な損害だよ?
みたいな失敗を繰り返しながら、それでも徐々に成長していった彼。
目を覆いたくなるような派手な失敗も減り、仕事も覚え、もうそろそろ一人でも大丈夫かな?と周りが油断し始めた頃…
また彼がやらかした。
「向井くーん!あれ?向井くーん?」
ランチタイムが終わり、慌ただしさから解放された店内で、店長が向井くんを呼んでいるというのに、その姿がどこにも見当たらない。
「ねぇ、向井くんは?」
「さっきまでテーブル片付けてたんですけど…」
もーどこ行った?新人君。
「どこ行っちゃったんだろ…いたら裏に来るように伝えて?」
「はい」
まだ休憩時間でもないのに突然いなくなった彼を探すために、お店の前、専門店の立ち並ぶ通路に出る。
「あ、いた!」
数件先のブランドショップの前にその姿を見つけたものの、どうやら彼はお年寄りの手を引いて、どこかに案内してあげている模様。
しかも、荷物まで持ってあげてるんだ?優しいね、向井くん。
でも考えてごらんなさい?
君は今、仕事中ではないですか?
久々に深い溜め息を吐きながら彼の様子を見守る。
しばらく経って、彼はお年寄りをインフォメーションまで送り届けると…
「あ…」
何かもらってる?まさかお駄賃?
お年寄りに何か手渡されて頭をポリポリ掻いて、ペコッとお辞儀して…
「やっと戻って来た…」
そこからこちらへ戻って来る彼は、まるでファッションショーのランウェイでも歩く様に颯爽と風を切り、実にスタイリッシュに…なのが、若干イラッとする。
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