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「ねぇ、聞いた?店長の話」
「なに?」
「向井くんについに告白したらしいよ?」
「へぇ…」
そんな噂を他の従業員から聞いたのは、それから更に数日後。
彼がこの店に来てから、三カ月が経とうとしていた。
「裏で抱き合ってたって!」
「嘘でしょ?大胆!」
狭苦しいロッカールームで、仲間達が面白おかしく話すのを笑いながら聞いていたけど、私の胸の奥はズンズンと嫌な音を立てた。
そっか、向井くんはやっぱり店長みたいな人が好きか…
なーんだ、そっかぁ…
勤務中、カウンターの中でコーヒーを落としながら、ホールで女性客と楽しそうに会話する彼を目で追った。
モテるね?相変わらず、新人君 …
「真子さん、あちらのお客様からテイクアウトのご注文いただきました」
「かしこまりました…」
ぼんやりしていた私にそう注文してきた向井くんを見て思う。
仕事も完璧にこなして、そそっかしいミスも減って、もう新人君じゃないねって。
いつの間にか私の手を借りずに何でも出来るようになって、それどころか最近じゃ私の方が頼りにしていて。
「真子さん、真子さん」って、いつも冗談言って笑わせてくれて。
いいなぁ可愛いなぁ、あの子が彼氏だったら毎日楽しいだろうなぁとか…ちょっと考えたりしてたけど。
だけど…
そんなに上手い話があるわけない。
だってあの子は、店長と…
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