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あの後僕らは抱き合いながら泣き続けた。
そしてやっと泣き疲れた二人は目の前に流れる川で顔を洗い、どちらかが「帰ろう」と言って、帰宅した。
そこで夢は現実に繋がっていく。
夢を最初から最後まで通過した僕は、あの頃の自分は若かったなと思った。
この夢を見て抱く感想は毎回同じである。若かった。
ちなみにあの日以降彼女とはメールはしているが、実際には会うには至っていない。心底会いたいと思っているが、今更会ってどんな顔をすればいいのか分からないのである。
今ならきっと……
数年後の自分がそんな風に考えているなんて、あの頃の僕が聞けば驚くだろうか。それとも納得してくれるだろうか。
明菜との出来事は僕の人生に於いて最重要ポイントであった。
此れ迄の人生に、あんなに僕を愛してくれた人は他にはいない。
深さだけではない。純粋な好意を向けてくれた存在もまた、彼女以外にはいない。
ただしそれを経験するには、あの頃の僕はとにかく若すぎたのだった。
そして厄介なことに、僕の脳はどうやら若い自分が遠のいていくことを恐れているらしい。
その証拠に何度も同じ夢を見せてくる。
しかし僕は年を取る。選挙にも行くし、お酒も飲むし、煙草も吸う。
そうして若い自分が離れていけばいく程、より明確になっていく事実があるのだ。
おっと。
また脳がこの夢を見させようとしている。
一日に二回は流石に心が持たない。
だが今日だけは自分に抗い、その事実を正直に告げたいと思う。
愛してくれた貴女へ
あの時の全てを、僕は後悔している。
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