愛してくれた貴女へ

2/11
前へ
/11ページ
次へ
「好きだ。付き合ってほしい」 「嘘でしょ……」 目を大きくさせて驚く彼女。 あぁ嘘だ。 夢の中の僕は軽い気持ちで真実を明かそうとしていた。 ~~ ちなみにこれは夢といっても、現実に起こったことに基づいた夢である。 僕は夢の中で過去を振り返っている真っ最中なのだ。 何故こんな夢を見てしまっているのか。 それは郵便受けに入れられていた結婚式の招待状が理由だろうと思う。 それは卒業後も連絡を取り合っているような仲である、高校時代のクラスメイトからのモノだった。 ちなみにこの夢を見るのは初めてではない。これは何度も何度も再生してきた為にすでに劣化が始まっている、古いビデオテープのような夢である。 そして今、夢の中の僕がある女子といる場所は、自分が通っていた高校の屋上だ。 この場所は学生達からは告白スポットとして扱われており、多くのカップルがここで誕生したと聞いた。 ちなみに現在は封鎖されているらしい。 何やらここの卒業生である男がわざわざこの場所を選んで、飛び降り自殺を図るという事件が発生したとのことだった。 酷く迷惑な話である。 話を元に戻すが、これは僕が初めてこの舞台に立った時の様子である。 では今からこの女子とこの場所に来るに至った流れから、詳細に振り返っていく。 ~~ あれは高校三年生の一月という卒業間際、僕は親友である晋助から突然焚き付けられたのだ。 「まだ一度もあの舞台に立った事がないというのは実に惜しいことをしている。それでは卒業後、高校生活を謳歌していたとは語れないだろう」 「そんなことを言ったって告白する相手がいないんだから仕方ないだろう」 「いないことはないだろう。お前は結衣が好きなんじゃないのか?」 僕は親友に筒抜けだった事を恥ずかしく思った。おそらく顔も真っ赤になっていただろう。 結衣とは仲良くしている女子の一人だった。一、二年生の時は同じクラスであり、よく話した。三年生になってからもメールをしたり、たまに二人で遊びに出かけたりもしていた。 彼女は艶のある長い黒髪に、眼鏡を掛けているまさしく文学少女といった見た目をしていたのだが、性格は実にさばさばとしていて、一緒にいて気持ちの良い存在だったのである。 さらに言うなら、僕と結衣はお互いに好き合っていたと思う。 これは当時も思っていたし、未だにそう思っている。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加