愛してくれた貴女へ

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「確かに僕は結衣が好きだ。けれど告白なんてした事がないし、上手くする自信がない」 どうせ彼女への気持ちがバレているなら、とその時の僕は晋助に正直な自分の気持ちを打ち明けた。 晋助はその言葉を待っていましたというような顔をする。 この顔の意味をあの時の僕は分からなかったのだが。 「そこでだ、練習してみてはどうだろうか」 「練習?」 「慣れる為には練習が必要だろう」 「そんな失礼なことできるわけがないだろう」 晋助は目を細め、口角を上げる。 それはひどく不気味な笑みだった。 「一人だけいるじゃないか。三年間同じクラスで、そんな冗談でも許してくれそうな女が」 僕は少し考えた後、成る程と頷いた。 あぁ。確かにあいつなら許してくれそうだ。 あいつというのは明菜のことである。 明菜とは三年間同じクラスであり、晋助と変わらないぐらいの仲の良さだったと言っても過言ではない。 僕が親友だと思っていたのは晋助と明菜だけだった、と言えるぐらい性別を越えた仲だったのだ。 明菜は男の遊びに理解を示し、いつも僕らに付いてきた。髪も短く、顔も男性的な作りをしていたので、僕らが女子として意識した事は無く、あくまで親友という立ち位置だった。 彼女なら練習台にしたところで恐らく成功しないだろうし、嘘だったと事情を説明しても僕を責めるような事はしないだろう。 「やるなら早い方がいいよな。卒業も近いことだから」 晋助は納得した表情の僕を見るや、すぐに携帯電話を取り出して、明菜に電話を掛けた。 僕から少し離れて、こそこそと何かを話している。 話している内容をわざわざ隠す事無いじゃないかと僕は思った。 「今日の放課後ならいけるってさ」 「ちょっと待て、それは流石に急すぎないか?」 流石の僕も焦り、そわそわした気持ちになったのを覚えている。 幾ら告白の練習だとしても、心の準備は必要だろう。 しかし晋助はもう決まった事だと、僕の話を全く聞かない。 僕はこの時に気付くべきだったのだ。 いつもの晋助と少し様子が違うという事に。
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