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そこで僕の夢は初めの場面に移る。
なぜこんなに飛ぶのかといえば、晋助が明菜に電話をしてから僕が告白の練習を実際に行うまでの間の事は、あまり覚えていないからだろう。
それは前後の印象が強すぎたせいかもしれないし、急な展開に緊張していたせいかもしれない。
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「好きだ。付き合ってほしい」
「嘘でしょ……」
彼女は驚きを隠さない。
目を大きくさせ、何かを考えているのだが落ち着かないといった様子で髪の毛をむやみやたらに弄っていた。
そら驚くわな。僕は彼女の反応は当然だと感じた。
なぜなら僕が逆の立場でも驚くからだ。
「本当なの?」
彼女は上目遣いをしながら聞いてくる
本当なわけないだろう。とその時の僕は頭で激しくツッコミを入れた。
この反応があまりに予想外であったので、僕は少し楽しくなってきた。
嘘だ。冗談だ。実は練習なのだ。
そう明かすには絶好のタイミングだったのだが、楽しみ始めていた僕はもう少し遊んでみたくなったのである。
しかしそれが失敗だった。
「あぁ本当だ」
僕がそう言うと、何を思ったか明菜は思いっきり力強く、僕に抱き付いてきたのである。
僕は思わぬ反応に頭が真っ白になる。
そんな真っ白な頭に、明菜はとてつもない豪速球を投げ込んできたのだ。
「嬉しい!!」
なにがだ。
「私も光太の事、ずっと好きだったの」
気は確かか。
そんなこと聞いた事ないぞ。
「ずっと片思いだと思ってた……」
僕の胸に顔を当てる明菜。
震える肩を見れば、泣いているのを必死に隠そうとしているのが分かる。
僕に好かれる事がそんなに嬉しいことなのか?
しかし、しかしだ。
やっと冷静になってきた僕は、やらかしたと思った。
こんな反応が返ってくるなんて、頭の片隅でも考えていなかったのである。
「明菜」
実は今のは練習で、本当は付き合おうなんて思ってないんだ。
言いたくないが言わなくてはいけない。
言わなければもっと取り返しの付かないことになる。
それを予感していた僕は明菜の肩を掴み、クリクリとした大きな瞳を見つめた
すると明菜も何かを感じたように、瞳を閉じる。
さぁ告げよう。そして精一杯謝ろう。
僕がそう決意した瞬間、明菜の顔は急接近し、僕の唇に彼女の柔らかい唇が接触した。
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