愛してくれた貴女へ

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それは僕にとって記念すべき初めての接吻であった。 きっと明菜も初めてだったのであろう。僕らのそれは明らかに慣れておらず、歯が何度もカチカチっと当たったような記憶がある。 気が動転し、さらには本能が揺さぶられ、言いたい事を言いそびれた僕は鳴り響くチャイムになんとかその場は救われるような形になり、明菜はやっと唇を離し、ニコッと笑う。 この時にはもう諦めるしかない状況に陥ってしまっていた。 「じゃあ教室に戻るね!」 僕は見たこともないぐらい幸せそうな笑顔で去って行く明菜をただ見つめる事しか出来なかった。 その日はもう授業に出る事はできなかった。そのまま仮病を使い鞄を持ち、家に帰った。 教室を出る際に一瞬晋助と目が合ったような気がしたが、すぐに晋助は何も知らないという顔をしていたように思う。 ~~ あの日、あの時から僕の人生は狂い始めた。 あんな過ちを犯さなければ、たとえ最高の幸せを手にする事が出来なかったとしても、何不自由のない生活の中から小さな幸せを感じるような生き方が出来ていたに違いない。 こんなに悩み苦しむことはなかった。 明菜の僕への想いは重すぎた。 それは知らずにいるべきだったのだ。 ~~ 次の日。 殆ど寝れなかった僕は珍しく朝寝坊し、昼を過ぎてから登校する羽目になってしまった。 そこで僕は驚くべき光景に囲まれた。 廊下を歩いている僕に好奇の目が向けられる。 何かがおかしい。僕は咄嗟に感じた。 今迄こんな視線を受けた事は一度もない。 クラスメイトの待つ教室に足を踏み入れると、やはりそこでも同じだった。 もう既に僕と明菜の話が広まっている。 そこで僕は確信した。 僕は逃げるように自分の席に座る。 すると晋助が近寄ってきた。 「光太、おめでとう。幸せになれよ」 ニヤリと気持ち良いとは言えない笑いを見せる晋助に、こいつは何を言っているんだと思った。 お前が唆したせいでこんな事態になったんじゃないか。 そう言い返してやろうと思ったが、晋助の席にいる二人を見て口を閉じる。 一人は真っ赤にした両頬に手を当てて僕と晋助を見ている明菜。 もう一人は僕の意中の相手である結衣。 明菜がいるのはクラスメイトであるから当然だ。しかしどうして結衣までここにいるのだ。と僕は疑問を感じずにはいられなかった。
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