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放課後。
俺は鞄を肩に掛けて教室を出た。下駄箱に向かい靴を履き替えようと思ったが、
「ない?」
何故か俺の靴が無かった。
無くて何処かに落ちてないかと辺りを見渡してキョロキョロしてると嫌なヤツらが目に入った。
「よーお、メグル君。どしたのキョロキョロしてぇ」
嫌な予想が浮かんでしまう。
あー嫌だなぁ。飛ばせるイベントなら飛ばさせて欲しい。
けれどそれは無理だ。
ヤツらが乗り気なのだから。
「お前らが隠したのか?」
諦めのこもった溜め息を吐きながら俺はそいつらに向き直る。日向とその友達御一行に。
心底面白そうなイベントでも始まるかのような薄気味悪い笑顔をしている奴らとは反対に俺は今から胃が痛い。
マジで腹立つんだけどこいつら。
「これだろ? お前が探してるの」
日向が俺の靴を俺に見えるように前に突き出した。汚い物でも持つように靴紐を摘んでいたのがまた癪だったが良く見ると何故か靴が滴っていた。
「ほら、やるよ」
そして雑に俺の足元に放る。
何度か地面を転がり、俺の足先に当たって静止する。すると、靴の中から何かが飛び出た。ピチャ、と音を立てながら出てきたのは泥。
「これは?」
事情を求めて俺は掠れた声で呟いた。
「え? お前の足裏が臭そうだったからそれ入れたの。それで気にならなくなるだろ?」
日向のあっけらかんとした話し方。
こいつは鬼か?
いとも容易くこんな事ができるなんて正気の沙汰じゃねぇ。
俺はもう、いい返さずにはいられなかった。
「なんだよ、お前。俺の事恨んでんのかよ。なぁ日向。何だよ、千代ちゃん盗られてビビってんのかよ」
俺はあからさまに挑発してみせる。
日向の前では絶対に千代ちゃんとは呼ばないのだがあえてそう口にする。
すると、日向のふざけた表情が段々と変わる。上辺だけの、乾いた笑みを浮かべ、日向が口を開いた。
「うぜぇ。うぜぇから死ね。何を理由に千代の隣にいるんだよボケ。俺の女に手を出すとか身分違いにも程があんだよ。お前ら、やれ」
辛辣な言葉責めだ。だけどこいつに何言われても僻みにしか聞こえないな。
日向の後ろで突っ立ってた奴らが前に出てきて俺を睨みつける。じりじりと歩み寄ってきて指をポキポキ鳴らしたり腕を回したり喧嘩モードだ。
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