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願い事は叶うものではなく叶えるもの
§
ある日、俺は神様を助けた。
お腹を空いてうずくまる金髪の幼女がいてコンビニで買ったおにぎりと唐揚げさんをやると、神様は喜んだ。
「神様に恩を得る事ができて俺はなんてラッキーな奴なんだ。よし、恩を押し売りして願い事を叶えてもらおう!」
「思惑がだだ漏れなのだが」
「嘘っ? 口に出してたっっ?」
「うん、しっかりとね」
神様は呆れ返って上目遣いのまま眉を顰めた。
「まぁ、そんな訳でお願い聞いて欲しいんだけど」
「うーん、まぁ、助けてもらったしいいっちゃ良いのだが、心の声を聞くと快く引き受け辛いな」
「あれは忘れて! 神様の懐の大きさを示すつもりでさ、さっきのは聞こえませんでしたって事で! ねっ?」
「はいはい。で、どんな願い事なんだ?」
神様は腕組みをしながら俺の願いを聞いてくれるのだった。さすが神様、懐が大きい。
「まぁ、そこまで大きい願い事じゃないんだけど。そのさ、好きな人がいるんだ。だからその人と両想いになりたいなぁって」
「なるほど。良いだろう」
「本当にっっ? やったー!」
「純粋な奴だな。だがな、一つだけ断っておくが私に願い事を叶えてやる力はない」
「は?」
どゆこと?
「いやいや、叶えてくれるんじゃないの? 良いよって言ったよね。神様なのに嘘吐いたの? それはダメだよね? 神様が嘘なんて」
「まぁ待て。話は最後まで聞け。私に願い事を叶える力はない。代わりにな、お前の運命を弄る事はできる」
「運命?」
「ふむ」
神様は可愛らしい相槌を打ち、続けた。
「この世にはな、運命というものが存在する。その運命の上を沿って歩いて最期を迎えるのだ。人間がパラレルワールドとか言っとるがあんなもんただの妄想だ。実際は選択肢は一つしかない。もしもなんてない」
「うんうん。じゃあ俺の運命は俺の好きな人と結ばれる瞬間はあるのかな?」
「ない」
即答された。ショック。
「だが私は神だ。お前の運命を弄る事ができる。レールを敷き直しお前が好きな人と結ばれる未来に繋げてやる。だが、運命の上を歩くのはお前自身。急に好きな人が言い寄ってくる事はない。お前がゴールまで正しい選択肢を選ばねばならん」
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