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あの男とは、このクラスのキングでありイケメンでありリア充であり非リア充の敵であり、俺のライバルである日向龍平だ。
ライバルというのは言わずもがな、日向も千代ちゃんの事が好きなのだ。
しかも奴の方が千代ちゃんと仲が良い、というか。
日向はクラスの中で上位のカーストに位置し、千代ちゃんもそこに立っている。
一方の俺はクラスの隅で地味な友達(失礼とは分かっているがそいつらも自分が地味だというのは自覚しているので良しとしてほしい)と漫画やゲームの話で盛り上がっているような奴なのだ。
立場は圧倒的に不利、かつ俺が千代ちゃんの隣に立つのも不釣り合いとも言われかねない。
だが恋は幾つも障害を乗り越えてナンボだ。神様にもらった千代ちゃんと結ばれる運命を無駄にはしない。
§
「はい、メグル君。これありがとうね」
「え?」
昼休み、友達とアニメの話で盛り上がっていると千代ちゃんが突然割り込んできて俺の机に漫画を置く。
「これって、今朝貸したやつだよね」
「うん。全部授業中に読んじゃった。だって四巻しかないんだもんあっと言う間だよ」
「授業中に。へぇ、意外と不良」
俺が意外そうに言うと千代ちゃんは何故か誇らしげにえっへん、と両手を腰に当てて「不良でしょ~?」と愉快そうに返答した。
そういうお茶目なところ、嫌いじゃないぜ。
「メグル君が貸してくれた本、青春群像劇だったね。テーマがハッキリしててすごく読みやすかったよ。早く読んじゃったからまた明日、別の漫画貸してくれないかな?」
「うん、いいよっ。喜んで! じゃあ次はどんなのがいいかなぁ。ラブコメ? アクション? ミステリ?」
楽しくなってつい、口調が早口になってしまう。彼女との話に夢中になり過ぎて誰かが近づいてくるのに気付かなかった。
「よお、何か楽しそうに話してんじゃん」
鼻に付くねっとりした喋り方。見下したような喋り方。
顔を上げるといつの間にか日向と、その友達連中がいた。
奴らはヘラヘラと笑っていたが内心では俺と千代ちゃんが仲良くしているのを快くないと思っているのが筒抜けだった。
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