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――雨が降り始めた。あの時、三か月前と同じく傘が無い。
また会えるだろうか……。
ふいに雨宿りしながら、思い出していた。
雨の振りしきる中に視線を向ける。おもえば、あの日に会った君をいつも探していたんだ。
すると、傘を持った堅の良い男が満面の笑みで駈けてくるのが見えた。
「お久し振りです! また、助けに来ました」
息を切らせながら、肩を揺らしている。屈んだ体から頭をあげて目が合う。
「これからは雨じゃない時も助けていいですか?」
驚愕しながら、目に湿っぽさを感じた。
「やっぱり君の傘がないとダメだね」
気がつくとすっぽり暖かさに包まれていた。今だけは激しい雨がやまないで欲しいと願うばかりだった。
〈 完 〉
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