序章

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まるで蝶のようだ 彼女を見た時、そう思った。公園でベンチに座って本を読んでいたその子は強い風にあおられた麦わら帽子を追って顔を上げたと思った瞬間立ち上がって手を伸ばした。 その時、彼女の着ていたフレアータイプのワンピースが風を受けて広がった。その姿が羽を拡げた蝶のように見えたんだ。 彼女は帽子を掴むとまたベンチに座って本を読み出した。僕はそんな彼女をじっと見つめていた。 声をかけてみようかな…と自問自答を繰り返していた。でも無視されそうな雰囲気の方が強い。僕は少しだけ彼女に近づいた。彼女が読んでいる本に目を向けると、それは偶然にもつい先日僕が読んだばかりの本だった。少しだけ見えない何かに背中を押された気がした。どうしようか迷いはしたけど、今はプライドよりも彼女に話しかけたい気持ちの方が大きかった。
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