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寝室に入った。不安にかられたからだ。優待券が無くなってないか?金庫から貴重品が入った小さなバックを取り出す。入れたときと同じ状態で安心する。でも、一瞬だった。盗まれたら、どうしよう。感覚が消えない。金庫の鍵は、自分の指紋だというのに。
「どうした?」
間近で、心配する声が聞こえてきた。我に返る。パーカーのポケットからシマリスが出て、服を引っ張りながら登ってきていた。親友の使い魔だ。信用していいはず。赤いカードを差し出した。
「これを預かっていて。誰にも見つからないように。私が使いたいときに、出してほしいの。できる?」
「簡単さ」
受け取るなり、シマリスはカードを小さくする。縮んでいくのを見て、これが魔法なのかと思った。シマリス自身の足先ほどにする。自らの口の中に放り込む。頬袋に仕舞った。ホッとできたが。別の意味で心配になった。
ドアを叩く音に、ドキッとする。ハデスがいるのを忘れていた。
「なあ。ここには、客室が二部屋あるんだな」
「ああ、うん」
親友と連絡を取るのは、後回しにする。小さなバックを持ったまま、ドアを開く。興奮状態のハデスが立っていた。彼の問いに頷く。この部屋に案内されたとき、ひととおり見て回った。客室が二部屋あるのを知っている。それぞれ、ベッドが二台に風呂と洗面台が付いている。スイート・ルームに泊まる人が、客を招くこともあるのかな。思ったものだ。
「俺達に貸してくれない?」
「はぁあ?!」
とんでもなかった。ハデスの頼みは。妙な声を上げてしまう。頭をよぎる。ファンの子に締め上げられる。
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